文学少女と死にたがりの道化


一時、ネット上のラノベ界で相当の人気を誇っていた「文学少女」シリーズ。 確かこの前完結巻が出て、好評のうちに幕が降りたはず。 ずっと気になっていたのだけれど、家の積み本の多さにおびえて手を出せずにいました。 が、ついに1巻を(借りて)読みました。


(紹介文より)“口溶け軽めでちょっっぴりビターな、ミステリアス学園コメディ、開幕!!” えーと、嘘言うな


透明感のある挿絵、ネット上での良い評判、「文学少女」という語から、もっと落ち着いた話かとおもって読み始めたら、さにあらず。 主人公は元・覆面美少女大ベストセラー作家の少年で、文学部の先輩の「文学少女」は本が大好きでページを破ってリアルに食べてしまう妖怪。 その上意外にも陽気なキャラクターで、おお、さすがライトノベルだぜ。 そう考えていた時期が、私にもありました。


途中、ところどころ太宰治の「人間失格」めいた文章が挟まれるのに、ちょっと期待感を抱かされつつ読んでいくと、物語にはミステリーが入ってくる。 恋の相談に来た女の子の、恋してる相手の先輩が存在しない? でも妖怪とか出てきてるし、幽霊でも驚かないよなあ。 え、10年前に自殺してる? ……きな臭くなって参りました。
そしてどんどん暗くなる話。 さあ、ミステリー解決編。 ……シリアスだ。 ちなみにこの辺で、何か既視感を感じると思ったら、『吉永さん家のガーゴイル』6巻でした。 ま、まあ、色々と考えさせられる、良いライトノベルであったことよ……と……思ってたら……


はい。 続きは読んで下さい、としか。 お勧めです。


しかし惜しむらくは、やはり(悪い意味での)ラノベっぽさ。 これ、もうちょっと書き方変えるだけで、もっと完成度の高い、素晴らしいジュブナイル作品になると思うのに。 ラノベにしてはいけなかった作品のように思います*1。 ただこれがラノベレーベルから出ることで、読む人は(差し引きで)増えただろうから、難しいところだけど。


あと、太宰治は色々読んでみたいな、と思った。 『人間失格』は大学の頃読んで、面白かった。 ただ、中学生くらいに読んでいたら、やばかったかも。


満足度:A−

*1:ラノベよりジュブナイルが優れているという意味ではなく、ジュブナイルにした方が完成度が高かっただろう、という意味