秋期限定栗きんとん事件

秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)

秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)

秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6)

秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6)


小市民を目指す主人公とヒロインに、日常に潜むミステリ、〈小市民〉シリーズ最新作(3作目)。 以前図書館で借りた1、2作目が面白く、また2作目のラストが印象的だったので、これが出たときは新刊で買おうかどうかずいぶん迷った。 最終的には、家にある本の量を鑑みて自重してしまったのだけれど。 結局、本作も図書館で借りてきました。


面白かった! まず、小学生に間違われそうな外見(実際には高校二年)でありながら、心は狼?なヒロインの小山内さんが相変わらず素晴らしい。

「糠に釘。そうね、わたしもきっと、瓜野くんとつきあってそう思ってた」
硬い微笑み。
「この子、他愛ないなって」
ええと。
ぼくはさすがに、そこまでは思わなかったかな。

また、文章は読みやすくかつ繊細で、情景が目に浮かんでくる。

ただ、ミステリとしては粗も残る。 上下巻を通して語られる連続放火事件については、まず読者が推理できるタイプの謎ではないし。 まあそれはいいとしても、犯人を絞り込む方法に無理がある(あれはバレるだろう)、都合良くみんなシーンに登場しすぎるなど、ミステリ読みではない私でも「ん?」と思った。 途中いくつか挿入されている、ささやかな謎解きのほうは上手くできているけれど。


しかし最後の最後に明らかにされる「動機」が見事で、そういう意味ではミステリとしても良い出来なのかも。 少なくとも私はとても楽しく読み終えました。

シリーズ通してお勧めです。


満足度:A−


既刊感想→春期限定いちごタルト事件夏期限定トロピカルパフェ事件