少女には向かない職業

少女には向かない職業 (創元推理文庫)

少女には向かない職業 (創元推理文庫)


少女だがヒロインではなくヒーロー。 ヒーローだが少女。


作者はのちに『私の男』直木賞を取った桜庭一樹。 富士見ミステリー文庫の『推定少女』『砂糖菓子の弾丸は撃ち抜けない』を読んだ時は「スゴイ作家が出てきた!」と思ったものだ。 しかし活動の場を一般文芸に移してしまい、その結果新作がハードカバーになったり*1、あらすじが面白くなさそうだったりで、読まなくなってしまっていた。

本作は文庫になり、また古本で安くなっていたので手を出してみた。 Web連載中のエッセイ、桜庭一樹読書日記を読んで面白かったというのもある。


暴虐な大人に苦しみ、そこから抜け出そうと闘う少女2人の物語である。 どっかで読んだような……というか、上記二作品と共通テーマである。 途中までは正直言って、焼き直しというか縮小再生産にも思えてイマイチだったが、最後の方は面白かった。 特に248〜249ページ(文庫版)のシーンが好きだ。

「大人なんて、こわくない」
「は……?」
「浩一郎さん、誰も、誰も知らなかったけどね。 あたしだけ知ってたけどね。 あたしの友達は、大西葵は、特別な女の子なんだよ。 誰も知らないけど、葵は、本物の殺人者なんだよ。すごいでしょ?」


上記二作品を読んだときほどの鮮烈な衝撃はなかったが、読んで損はなかったと感じている。


例えば『砂糖菓子の〜』と本作の違いを論じれば、それだけで卒業論文くらい書けそうだ。 一般小説ということでラノベ時代*2よりすこし大人しくなったようにも思えるが、でもバトルアックスとか出てくるな。




満足度:B+


他サイトのお勧め感想:うららさん

*1:ただでさえ家に積み本が多ので、体積の多いハードカバーの本はよほどのことがない限り買わないことにしている。

*2:ヒロインの名前が海野藻屑とか。