決断力

決断力 (角川oneテーマ21)

決断力 (角川oneテーマ21)


◆最強の将棋指しである羽生善治の、思考の一端に触れられる本。


間違いなく当代最強、もしかすると史上最強棋士羽生善治。 タイトル七冠に輝き、将棋を知らない人でも羽生さんだけは知ってるという、将棋界のスーパースター。 そんな羽生が、将棋を通して得た真理や思考法について語る……となれば興味も沸くのだが、有名人の本というのは大概本人が書いていない。 残念ながら本書もおそらくその口で、「羽生はこんなこと言わない」と思える記述がやたら目に付く。 いきなり青色ダイオードの話をしたり、ビジネスの話に広げてみたりという語り口は、米長邦雄*1ならともかく、まったく羽生らしくない。 おそらくはインタビューのように聞き手書き手が存在して、そういう話題を振って無理やり繋げているのだろう。 新書だからそういう方向に話を持って行きたいのはわかるけれど、ゴーストライターが透けて見えるようなこの出来では、いっそ書き手を明らかにして羽生自身の言葉と分けたほうがマシ。


といっても、私は図書館で借りたからお金も払ってないし、読む価値がないと言うほどでもない。 面白い話もいくつかあった。 羽生でも集中できない対局はあるのだとか、駒が光って見えるとか、将棋を考えすぎて狂気の世界の入り口が見えるけれど、一応入らないでおこうとか。


しかしこの本、ターゲットが良く分からない。 将棋界の紹介とビジネス指南、どちらも中途半端だ。それなりに将棋に興味がないと面白く読めなさそうだが、将棋ファンが読むと物足りなさと違和感がありそう。 まあでも、私はもともと新書系好きじゃないから、その辺は割引かないといけないかもしれない。


満足度:

*1:現・将棋連盟会長。大棋士社交界にも明るく、教育委員会など色んなところに出没するが、問題も多い人。