扉の外

扉の外 (電撃文庫)

扉の外 (電撃文庫)


◆密室に閉じこめられた高校の一クラス。わずかなルールが定められたそこは、実際の世界や社会の縮図となるか。


第13回電撃小説大賞<金賞>受賞作。 賛否両論の評判を聞いていたので、図書館で借りてきた。


アイディアは面白い

  • 「腕輪」をつけた人間が、密室内にいることでポイントが貰える。
  • そのポイントで娯楽、生活用品の購入、および「スペード」*1の生産ができる。
  • 密室から出るには腕輪を外さなければならず、一度外すと二度と付けられない。

――これだけのルールで、現実世界における国家間の争いや社会の構造、人間関係の歪みなどを、うまく単純化して映し出している。
宗教問題とかは存在しないし、現実より相当状況は優しいんだけれど、それでも争いはなくならないんだよなあ、とか。
戦争状態では、有能な人物による独裁政権が一番強いけれど、問題はそれをどうやって維持するかだなあ、とか。 まあ今更ですが。


ただ、主人公がちょっとアウトロー気取りの痛いやつに見えてしまい(作中でも指摘されてるけど)、読んでいて辛い*2。 そして主人公は相当行き当たりばったりで考えなしだ。あと、最初からみんな無気力すぎるだろう。 高校生ってそんなに大人しくもないし、流されやすくもないと思う。あと女子ばかりリーダーシップ取るのは不自然じゃないかとか。*3


そしてラストの展開が……ああ、作者の力量が足りなかったのかな、と思ってしまう内容。 結局、それでどうするの?と突っ込みたくなる。 面白い設定なのに、惜しい作品だ。

ただ、続編があることには驚いた。この後どうやって続けるんだろう。


満足度:

*1:説明が難しい。現実世界で言えば他国を攻撃する兵器にあたる。

*2:私は優等生タイプ(自分で言うか)なので、相性が悪くて共感しにくいのだ。

*3:このあたりは、作者と私の高校生活のギャップが出てる気もする。