春期限定いちごタルト事件

春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)

春期限定いちごタルト事件 (創元推理文庫)



図書館から借りてきました。 結構面白かった。
高校入学を期に、小市民になろうと努力する、男女二人組(小鳩くんと小山内さん)のお話。 ところが些細な事件が軒を連ねてやってくるので、おもわず首を突っ込んでしまい――という、人の死なない身近なミステリ短編集。 謎の一つを例に挙げると、「余分な食器を使わずにどうやって美味しいココアを入れるか」。 多少突っ込みどころはあれど*1、工夫が感じられて良かった。
衝動を抑えつつも、地がのぞいてる時の小山内さんが、怖くて素敵です。 地が完全に出てるときも良いけど。


あまり内容と関係ないけど、ちょっと耳の痛い台詞があったので引用。 小鳩くんは推理癖、解説癖を封印しようとしているのだけど、昔の自分を知る人からこんな風に言われる。

「わからないな、前のぼくはどうだったって?」
激せず、しかし健吾はぼくを睨みつける。いやあ、懐かしい。昔はよく健吾と睨み合ったものだ。
「……わかっていることは、全部口に出さないと気が済まなかった。自分の知らないことを他人が知っていれば、憎まれ口に負け惜しみ、だ。
 だがな、いまのお前はもっとタチが悪い。ちょっと話しただけじゃ丸くなったように見えるけどな。口と性格の悪いガキが、顔は笑っても腹に一物ありそうな嫌な野郎になっちまった」

本性を隠そうとしても、それを見抜かれるとむしろ醜悪に写る、というパターンか。 隠さない方がいいのだろうか?


青春小説でもあるとは思うんだけど、どこか後ろ向きだったりする。 ライトノベルに近い……というよりジュブナイルかな*2。 落ち着いた雰囲気。 読みやすいし、万人向けだと思います。 機会があったらどうぞ。 私も、そのうち他の作品も読んでみようと思う。


満足度:B+

*1:あの事件とあの事件は、犯人が証拠隠滅しなさ過ぎだと思う、とか

*2:ニュアンスの違い、伝わるでしょうか