スイートホームスイート1 世界で一番いらない遺産


作者は、ファミ通文庫の中堅で手堅い良作を書いているイメージがある、佐々原文緒。
『バトル・オブ・CA』の1巻は結構面白かった。2巻以降は家のどこかに積んでるけど。
この本は、「100円で知ってるタイトルだったから」といういつものパターンで購入。そろそろ懲りなさい私。


高校の卒業式を終えた主人公・一彦が、ベンツで拉致られるとこから物語はスタート。なんと一彦の曾祖父は、ヨーロッパにある小国の大領主だったという。危篤の曾祖父に呼ばれ、その小国に無理矢理連れてこられた一彦を待っていたのは、曾祖父の死、一彦と1つ違いの「曾祖母(曾祖父の後妻)」、遺産相続のゴタゴタ、さらにはファンタジックでオカルトな存在たちだった――
……コレ、ちゃんとあらすじを読んでいたら、買わなかったかもしれないなあ。


とはいえ、本編はあらすじの印象ほどひどくはない。
若き未亡人「曾祖母」アデルは広島弁を喋るという新機軸ヒロイン(?)。一人称は「わし」。一彦には基本スパルタで接する。

「何をグズグズしとる? さっさと起き上がりんさい!」

文章としては、コミカルな描写が上手く、ツッコミ成分やや多めの一人称文体が結構好み。
ただ、エッタ(メイド)についての伏線が足りなかったり、一彦がいきなり自分の身を盾にするあたり、展開が唐突すぎると感じた。あと主人公なんだから、一彦を終盤もう少し活躍させてあげよう。


まあ、悪くはないんだけど……これよりは『バトル・オブ・CA』の続きの方が気になるな。発掘してみるか。


満足度: