ファイナルシーカー レスキューウィングス


作者は『復活の地』『第六大陸』などの名作SFを生み出した、小川一水さん。
好きな作家の一人なんだけど、これを買いはしなかったのは、この前の『疾走!千マイル急行』がいまひとつだったのと、この作品も評判があまり良くなかったから。
図書館で見かけたので借りてきました。


主人公・英治は、航空自衛隊の救難飛行隊員。レスキューのスペシャリスト。
遭難者を発見することに長けており、『千里眼』の異名を取るが、
それは英治の肩に取り憑いた、少女の幽霊の力によるものだった――


綿密に取材していることは分かるし、読者に伝えたいことも分かるけれど、話として面白いかと言われるとイマイチ。おそらく書きたいことが多すぎたんだと思う。

  • 自分の力でなく遭難者を発見し、讃えられることへの主人公の負い目
  • 幽霊が主人公にさせたいこと。幽霊が望んでいること。
  • 助ける対象が、あまり好ましい人物でないこともある、ということ。
  • レスキュー隊であると同時に「軍隊」でもあるという、自衛隊救難隊の特殊性。
  • しかしそんな彼らも(当然)普通の人と同じ人間なんだ、ということ

やっぱり多い。その結果、どれも中途半端になっている印象だった。


気になるのは、レスキューを舞台にした作品でありながら、人を助ける達成感がほとんどないということ。上に書いたような要素が多すぎて、「助けられた、良かった!」となることがない。その分、軍隊の話を絡めたりしてし、自衛隊救難隊というものについて色々と考えさせられる話にはなっているのだが――そんなノンフィクションに対するようなスタンスで読もうとすると、こんどは幽霊の存在が邪魔になってくる。
そもそも、幽霊は必要だったのかなあ。幽霊なしではMFJ文庫というライトノベルレーベルでは出せないのかもしれないけれど、それならそれで軍隊であるという要素を削るとか……。
幽霊の話を抜かして、ノンフィクション風に仕上げたものを(別の出版社から出すことになるだろうが)読みたかったとも思うけれど、それだと今度は読んで欲しい層に届かない、とかなのかな。難しいな。


満足度: