奇蹟の表現

奇蹟の表現 (電撃文庫)

奇蹟の表現 (電撃文庫)



第11回電撃小説大賞<銀賞>受賞作。かなり昔に100円で購入。
発売当時、ネットでの評判が結構良かった作品。


 主人公・シマは元ヤクザの親分という、ライトノベルでは滅多にない設定。
しかも妻子を殺されて、後悔と諦めの日々を送ってるところから、物語スタート。渋いなあ……
 ちなみに本人はサイボーグ化して命を取り留めたため、現在の見た目は猪男*1
他に外見の選択肢はなかったのだろうか。
 そんな主人公が、修道院で暮らす孤児の女の子・ナツと出会う。
ナツは親に捨てられた反動でか、頑なに神を信じる直情型の子。
初めはシマに警戒感を抱く。ま、そりゃそうだ。顔、猪だし。
 そこに起こる、宝物「神の心臓」を巡る抗争。巻き込まれる修道院
修道院に暮らす子供たちを守るため、シマは――
そんな、ちょっとハードボイルドっぽい話。


 ただ、私はあまり面白く感じなかったわけですが。
テーマの一つが「神への信仰」なんだけど、この類の話、苦手なんだよね。
共感できない、というか単に良くわからないのか。
いっそファンタジーな神様なら割り切って読めるんだけれど、これ完全にキリスト教だし。
 そのせいもあって、キャラクターの行動がどうもしっくりこない。
あと、戦闘の描写にあまり迫力がなく、展開がご都合主義的に見えた。


 ラストのスタッフロール付きイラストを見るに、
ハードボイルド映画のような話を目指したんだと思うし、
それは成功してるんだけれど……
 映画と違って、映像の迫力で押し切れないのだから、
人物や動機、背景などをもっと緻密に描写して欲しかった。


満足度:B−

*1:クリスタニア風に言えばパーシャルボーア。……誰がわかるんだこの例え