哀しみキメラ

哀しみキメラ (電撃文庫)

哀しみキメラ (電撃文庫)


第12回電撃小説大賞<金賞>受賞作。発売はちょうど2年前。
ちなみにその時の<銀賞>が『狼と香辛料』。現在アニメ絶賛放映中(見てないが)。


たまたまエレベーターに乗り合わせた4人の男女に、<モノ>(妖怪のようなもの)が取り憑き、
4人は<モノ>と共生関係となってしまう、という話。


デビュー作だし、そんなに話題にもならなかった(?)から、あまり期待してなかったのだけれど、予想外に面白かった。
良い意味で(便利な言葉だ)、ライトノベルっぽくない
妖怪のような存在が出てくる話で言うのもなんだけど、リアリティがあるというか。
普通こういう話だと、途中から異能力バトルになって、最終的には大団円――
というパターンになりそうだけれど、この話ははそうではなく、
「半分人間でなくなってしまった4人はどう生きるのか」という所を延々と描いている。
4人の考え方の違いから起きるいさかいや、登場人物の思い通りにはならない話の展開に、
思わず感情移入して読んでしまった。

「俺はお前のその視野の狭さが大嫌いだよ! 自分たちだけよければいいっていうなら、もう人間やめちまえ!」
その瞬間、十文字は驚いたような顔をした。そして、
「なんだよ、お前、まだ人間のつもりでいたのか・・・・・・・・・・・・・?」
純は絶句した。


難を言えば、あまり主人公の純は好きじゃないし(十文字の方が共感できる)、
読後ちょっと重い気分が残ったりもしたけど、まあそれは物語上仕方ないかな。
ただ、後半ヒロイン絡みのとこにちょっと無理があったんで、
前半でもう少し、主人公とヒロインの絆を描写しておくべきだったんじゃないか、とは思う。


しかしこれ、1巻で綺麗に終わってる作品なのだけれど、
この後、続編が4巻まで出ているんだよな……
続きを読みたいような、読みたくないような。


満足度:A−