TOY JOY POP

TOY  JOY  POP (HJ文庫)

TOY JOY POP (HJ文庫)


されど罪人は竜と踊る (角川スニーカー文庫)』の浅井ラボが、新レーベルHJ文庫に参戦。これも図書館から借りた。
大学7回生のアホ演劇作家で、退屈を嫌いろくでもないことを延々喋り倒す男・福沢と、
その周りになんとなく集まる女性4人の群像劇。
ストーリーはあってないようなもので、下に紹介するような、やたら長いセリフに見所がある。

「恋愛やセックスは趣味のひとつにしかすぎないと言うけど、それでもあえてしたほうがいいと思う。特に男の子はな」
「そうなの?」
「一部の天才かとんでもない優秀さがある男ならともかく、99.9%たる普通の男は誰からも注目されない。男は自分より上の男には嫉妬するので、褒めてくれる存在など母親か恋人以外にはいない。大人になると、親ですら息子への興味が消える。消去法で、褒めてくれる人間など恋人だけになるわけだ」

論理的にはアレだが、恋人を持つ利点は「褒められること」っていうのは、正鵠を得ているかも。


もう1箇所引用。
脚本の最後が思いつかず投げやりになる福沢に、熱く怒った監督・笹岡の言葉。

「あんたの舞台は毎回ワクワクしたよ。舞台の上でバイクを走らせて、愛する女を守る役のあんたが本当に轢かれたときは凄かったよ。わざわざ全治二ヶ月の骨折をするなんて半端じゃねえよ。『骨折の経験をしたことないから、してみたいのもあった。次からは事故のシーンはリアルになるよ』とか頭おかしいよ。舞台上では普通のハムレットが演じられていて、客席の客が『福沢脚本らしくないな』と思ったとき、実は客席300人のうち200人が役者だった演劇は狂っていたよ。劇への野次が連なって最後に200人の人間関係が最後につながって、舞台の上の劇と絡んでの、あの驚愕のオチ。なに考えているかまったく分からねーよ」

その演劇見てえぇー。


他にも引用したい箇所があるけど長くなるのでこの辺で。とにかく、局所的にはとても楽しめる文章がたくさんある。

ただ、400ページ超という長めのこの話、面白くないところも結構ある。
「何かを証明することは出来るか」についての延々続く哲学的議論めいた言葉遊びや、
福沢が書いて自ら没にした劇の最終章「ロリの空」、あと長い格闘シーンあたり。
『されど〜』も戦闘シーンは長かったけど、あの世界には咒式(科学的魔法)があったからな。
蹴り、突き、関節技だけで何ページも書くのはやり過ぎだった。
それから、女子高生二人組の話もあまり良くなかったかな。
逆に年長者二人組の「配布者」の話は好きだった。


面白くない部分もあるし、私が面白いと思う部分も間違いなく人を選ぶ、ということでお勧めはしにくい。
ところで『されど〜』の続きまだー?


満足度:B+