悲しき熱帯

悲しき熱帯 (角川文庫 (5803))

悲しき熱帯 (角川文庫 (5803))



これも本棚から発掘した本。当然100円。
我ながら、節操なしに買いすぎだ。


熱帯を舞台にした短編が5本。
村上龍にしては比較的ソフトな話が揃っているように思う。
表現は非常に詩的で独特。例えば、

光が凶暴に跳躍する昼が終わった。残された僅かな光の粒は黒襦子の帯となり滑らかな海面に張り付いている。発光する苔が密生した岩盤、胎内から押し出されてきたばかりの短毛種の猫、煉りかけのパイ皮の表面、夕暮れ時の海面はそれらに似て発酵している。

こんな感じだ。まあ、そんなに悪くはなかった。


巻末の栗本慎一郎の解説が何を言っているか分からないという問題はあるが*1


満足度:

*1:一見、ちゃんと解説しているように見えるが、「だから」「なぜなら」などの前後で文章がつながっていない。読者は煙に巻かれるしかない。