ピーターパン・エンドロール

ピーターパン・エンドロール

ピーターパン・エンドロール


作者の日日日さんは色んなタイプの小説を書いているけれど、
これは『ちーちゃんは悠久の向こう (新風舎文庫)』の流れを汲む青春小説。
新刊で買いました。この人のこの路線には、結構期待しているのです。


アイコンはdarkを選びましたが、そんなに暗いというわけではありません。
現実が現実として把握できなくなり、虚構の世界に逃げ込みつつある少女が、
ひたすら本に没頭していて浮世離れしていながら、しかし何故か確固として存在する少女と出会う。
一人目がウェンディで、二人目がピーターパンに例えられています。


さて、読んでみると、一応最初から惹きつけられはしたのですが、
途中まではどうも安っぽい話になりそうな予感がしていました。
青春時代特有の、青い、自意識過剰な悩みの話。
ところどころにある伏線は分かり易すぎ、結末もおおよそ予想できます。
「ピーターパン*1も読んでみたいなあ」くらいのことしか思いませんでした。

しかし、終盤に差し掛かるにつれて、どんどんと引き込まれていきました。
登場人物の必死さが伝わってきたからなのか、
私も二人目の少女と同じように本が好きだから、彼女に対して共感を覚えたからか。
意外にも、謎解きではいくつかサプライズもあり(無理もあるが)、
前作『うそつき―嘘をつくたびに眺めたくなる月 (新風舎文庫)*2と違い結末にも納得。満足です。おすすめ。


満足度:A−

*1:子供向けの絵本くらいでしかしらなかったが、実は痛烈に皮肉な話らしい。

*2:そういや感想書いてなかった……