天になき星々の群れ

良い作品を書くのに、出版の機会に恵まれない作家と言うのは結構いる。第6回のスニーカー大賞で<金賞>を取り、デビューした長谷敏司もその一人だ。なんと2001年から2005年まで、作品はデビュー作『戦略拠点32098 楽園 (角川スニーカー文庫)』とこの本のみ*1。今年に入ってやっと新シリーズが始まったが、続いてくれるだろうか。そっちはまだ読んでないけど。
デビュー作もそうだったが、SFである。難解な用語などは出てこないので安心。ただ、人名、地名を含めてカタカナ語が非常に多く、把握に一苦労する。加えて序盤は展開が地味なので、読み進めるのが少し大変だ。
故郷のゲリラを支援するため暗殺者となった少女・フリーダが、表面上は平和な星の平和な学園に暗殺のため潜入し、そこで真っ直ぐな少女・アリスと出会い、戦争が巻き起こる中、憎んだり羨んだり助けたりする話である。アリスは綺麗事を吐くキャラで戦いを嫌うのだが、当然フリーダや、自衛のために戦おうとする市民たちに嫌悪される。この辺りの描写、および展開が、ご都合的にならず、非常に上手い。最終的にアリスとフリーダは共に変化していくことになる。いろいろと考えさせられる話だった。またストーリー的にもレベルが高く、物語が終盤に近づくにつれ色々な背景や伏線が明らかになり、最後までどう決着がつくかもわからない。かなり面白かった。おすすめです。

満足度:A−

*1:アンソロジー形式に参加したことはあるが、単独ではこの2作品だったはず。