ホーンテッド!

ホーンテッド! (MF文庫J)

ホーンテッド! (MF文庫J)

高校二年になって1ヶ月のある日、僕・久遠悠紀は幼馴染の少女・白咲深春に屋上に呼び出された。てっきり(いつものように)ひどい目に合わされるのかと思いきや、なんと好きだと告白される。しかし答えを保留していったん別れたその直後、深春は車に轢かれてしまう。彼女の体に取りすがる僕。だがその時、背後から聞こえた声は当の深春のものだった―― 恋人に憑依された(ホーンテッド)主人公による、アンチ・正統派ラブコメディ!


第0回MF文庫Jライトノベル新人賞優秀賞。西尾維新に似た、饒舌で戯言めいた一人称の文章。最近多いな。しかし言葉遊びのセンスは西尾維新にかなり劣る。だが、ギャグは色々な意味ですごい。そしてやばい。とりあえず色々と引用してみよう。

まずは思わぬ告白をされたシーンでの、主人公のモノローグ。

………………………現状認識――失敗(エラー)。思考回路六十四倍速でフル稼働――破裂(バースト)。悪性変異発生。五感に異常確認。第六感に識別不明反応。見当識消失。自己同一性損耗。前方に未確認物体出現! ダメです、回避不能です! 脳内偉人はかく語りき、「お前はもう死んでいる」、第二人格が云う、「逃げちゃダメだ」。現状再認識。警告、警告、警告、手遅れ。
深呼吸。
すぅ――――落ち着け、僕。
コマンド選択。《たたかう》 《にげる》
→ 《にげる》
「おっといけない、早く家に帰って 《俺様のレストラン》 の再放送を見ないと」
「逃げないで」
しかしまわりこまれてしまった。

のっけからこれです。すごいテンションだ。この後も続くのですが割愛。

次。色々あって後輩の女の子とキスをする破目になった主人公のモノローグ。

自分の顔を彼女の顔にゆっくりと接近させ。その唇に、ちゅーをした。よくあるラブコメのように寸前で邪魔が入ったりもしなかった。僕はちゅーをした。抉りこむようにちゅーをした。ちゅーをしたあっ! 脳内で『はじめてのチュウ』が何故かラップ調で流れ出す。ヤッタ、ヤッタ、ヤッタYOーッ! やっちまったよおおお! 嗚呼、あああ……、……いやまあ、別にはじめてのチュウというわけでもないんだけど。

さらに次。その後輩の女の子――屋上から飛び降りたがったりするアレな子――が作ってきてくれたお弁当を食べながらの会話。

「たこ型ウィンナーにウサギ型リンゴ……。僕も昔作ったことあるけど、これって結構難しいんだよね」
「えへへ、私、刃物の扱いだけは得意なんです。慣れてますから」
「……どうして慣れたかは怖いから聞かないでおくよ」
「じゃあヒントだけ、……手首
「だから言うなってのに!」
「冗談ですよ、本当は小動物を……」
「もっと悪いわ!」


まだまだあるのだがいいやもう。このノリについていけるかどうかですべては決まります。私は最初立ち読みした時は全然ダメだったのですが、二回目読んだら異様にツボにハマリ、買って帰りました。多分読んだ時の精神状態によるのでしょう。まあクライマックスとかはギャグ抜きで真っ当に好きですが、メインはあくまでギャグなので、↑の引用読んで面白そうだと思えたら是非どうぞ。


満足度: