されど罪人は竜と踊る 3 災厄の一日 (角川スニーカー文庫)

災厄の一日―されど罪人は竜と踊る〈3〉 (角川スニーカー文庫)

災厄の一日―されど罪人は竜と踊る〈3〉 (角川スニーカー文庫)

作用量子定数と波動関数に干渉し、超常現象を起こすことが出来る、現代の魔術・咒式。主人公は化学系攻性咒式士であるガユスと、生体系攻性咒式士のギギナ。相性、仲、そして互いの口が超絶に悪いコンビが、またもロクでもない事件に巻き込まれる――


「ポスト・ラグナロク*1」と私が勝手に呼んでいる『され竜』シリーズ第3巻。短編集です。シリアスからコメディまで色々な短編をそろえており、どれもなかなかの出来。シリーズの売りであるケミカルな戦闘と、毒舌の応酬が楽しめます。それではガユスから敵に贈る、化学咒式の講義を紹介。

「敗因その四。おまえの咒式は精密さも練りこみもまったく足りない。自分が巻き込まれるのを防ぐため、この手の毒ガス咒式は限定結界内に発動するが、純粋な透明のサリンならその範囲を見切って躱すのすら難しい。
だが、おまえは組成式だけで考え、サリンという物質が、ヘキサンを溶媒としてジエチルアニリンを反応促進剤に使い、ジフロとイソプロピルアルコールを反応させて作るという手順を、思考と咒式で辿っていない。だからおまえの咒式は不純物が混じり黄色がかってしまい、発動時に視認できてしまう」

以上、化学練成咒式第四階位<死咒燐沙霧(バル・バス)>――サリンを合成する咒式――についての講義でした。
こんな化学系知識を交えたくどい戦闘が、ハッタリとして楽しめるようなら、おすすめのシリーズです。


満足度:A−

*1:第五回スニーカー大賞受賞作『ラグナロク』のこと。作者は安井健太郎。異常にくどい戦闘描写と容赦のない展開が特徴。最近新刊が出ない。