いつかどこかで。 (文春文庫)


スポーツ・ノンフィクションの傑作『28年目のハーフタイム』、そして『決戦前夜』の著者である金子達仁の初エッセイ集。サッカーのみにとどまらず、様々なスポーツの選手との交流、そして筆者の感じたスポーツ界の課題、その他食や音楽、単なる与太話も沢山交えた全40編。


上にあげた二作品は紛れも無く名作。どちらもサッカーが題材のノンフィクションで、前者はアトランタ・オリンピック、後者はフランスW杯予選の話。この二つは非常におすすめです。さて、では今作はというと、残念ながら面白くない。金子さんは『惨敗』という「サッカー界への批評」的な作品も書いているんだけれど、それを読んだときには「この人、批評向いてないんじゃないか」と思った。そして今作を見る限り、エッセイも向いてないようだ。あまり筆者本人が面白い行動をするわけではなく*1、感性が独特だったり視点や表現が個性的と言うわけでもない*2。ついでに、(この作品にも所々ある)批評的な文章の場合、基本的にいつも言っていることが同じ。「勝利への執念が足りない」。いや、正しいんだとは思うんだけど、いつもそれしか言わないとなると、読んでて面白くはない。具体的な改善策を示すこともあまりないし。そんなわけで、金子さんにはエッセイでもジャーナリズムでもなく、スポーツ・ノンフィクションを書いて欲しいなあ、と思っていたら、なんと本人が自分でそんなことを書いていた。「私は、(ジャーナリストではなく)ライターになりたかったのだ。」是非そうしてください。そちらの本が出たら買うかも。


満足度:C

*1:面白い行動をする筆者の例としては椎名誠をあげとく

*2:こちらの例としてはさくらももこ辺りをあげとこう